Oracle Linuxとは
※前回の記事の後半です。
本番環境でも無償利⽤可能
Oracle Linuxは本番環境でも無償で利⽤できるRHEL互換ディストリビューションです。アップデートもRHELと同等の期間提供されます。
Oracle Linuxが近年注⽬を集めたきっかけは、CentOSがRHEL互換ディストリビューションとして終了するという、2020年末のアナウンスでしょう。当初は2029年までサポート予定だったCentOS 8が2021年末にサポートが終了したのです。アップデートが提供されなくなり、ミラーサイトも停⽌しました。
その後、AlmaLinuxやRocky Linuxなどの新しいRHEL互換ディストリビューションもリリースされました。それに対し、Oracle Linuxはエンタープライズ領域で⻑年の実績があるのが強みです。また、アップデートの迅速な提供だけでなく、対応しているハードウェアやサードパーティーソフトウェアの数も圧倒的です。
以下の表は、それぞれのディストリビューションのサポート期間です。
Linuxディストリビューション | サポート期間 |
---|---|
Red Hat Enterprise Linux 7 | 2024/6/30 |
Red Hat Enterprise Linux 8 | 2029/5/31 |
CentOS 7 | 2024/6/30 |
CentOS 8 | 2021/12/31 |
Oracle Linux 7 | 2024/12 |
Oracle Linux 8 | 2029/7 |
無償利⽤の場合、Oracle Linuxでも技術サポートは受けられませんが、それはCentOSや他のRHEL互換ディストリビューションも同じです。
また、現在CentOSやRHELからOracle Linuxへの移⾏ツールを提供しています。これらのツールを使うと、再インストールしないでインプレース・アップグレードできます。
※この⼿順は有償サポート契約が必要です。
RHELと同等の10年間のサポート期間
さらに有償で延⻑サポートも可能
技術サポートが必要という会社もあるでしょう。Oracle Linuxでは有償サポートを契約することで、24時間365⽇の技術サポートを受けられ、Kspliceを初めとする有償サポートだけの特典も利⽤できます。
サポート契約には、標準的なPremier Supportに加え、サポート範囲は狭くなるけれど安価なBasic Support、通常より⻑いアップデートを受けられるExtended Supportなど複数のメニューがあります。
特筆すべきは、RHELのサブスクリプションである「RED HAT エンタープライズ契約」よりも⾃由度が⾼いことです。「RED HAT エンタープライズ契約」は途中解約が困難でロックインされがちです。それと⽐べると、Oracle Linuxは利⽤者の都合に合わせた柔軟な契約が可能です。詳しくは弊社営業までお問い合わせください。
Kspliceによる再起動不要のパッチ適⽤
Kspliceは、OSを再起動することなくカーネルなどをアップデートできるライブパッチングシステムです。アップデートしたLinuxカーネルを有効にするには、OSを再起動する必要があります。しかし、Kspliceを使⽤すると再起動しなくてもアップデートを有効化できます。
おもなメリットは以下の通りです。
- ダウンタイム無しのパッチ適⽤/ロールバック
- 迅速なセキュリティ脆弱性への対応
KspliceはPremier Support契約者向けに提供されている機能で、Oracle Cloud Infrastructureでも使⽤できます。UEKだけでなくRHCKも対応しており、glibcやopensslなどライブラリにも対応しています。
RHELでもkpatchというライブパッチングシステムが提供されていますが、Kspliceほど完成度が⾼くありません。
エンタープライズ向けの先進的な機能
Oracle Linuxはエンタープライズでの利⽤が多いため、セキュリティや⼤規模向けの機能も充実しています。
セキュリティ分野では、FIPS 140-2(連邦情報処理標準)への対応や、セキュリティー技術実装ガイド(STIG)なども提供しています。
⾼度な機能としては、Solaris譲りのトレースツールDTraceやスケーラブルな分散ストレージGluster Storage、クラスタリングソフトウェアOracle Clusterwareなどです。
また、⼤規模環境を効率的に構築・運⽤できるさまざまな機能を提供しています。次の表はOracle LinuxとRHELを⽐較したものです。
ツール/基盤 | RHEL | Oracle Linux |
---|---|---|
インフラ管理ツール | Red Hat Satellite | Oracle Linux Manager(Spacewalk) |
構成管理ツール | Ansible Tower | Oracle Linux Automation Manager(AWX) |
仮想化環境管理ツール | Red Hat Virtualization | Oracle Linux Virtualization Manager(oVert) |
Kubernetesプラットフォーム | OpenShift | Oracle Cloud Native Environment |
Oracle Linux KVMによるハードウェアパーティショニング
これまではLinuxの部分にフォーカスしてきました。Oracle製品をOracle Linux KVMの仮想サーバー上で利⽤したときには、ライセンス上の⼤きなメリットがあります。
Oracle Databaseを初めとするOracle製品を仮想サーバー環境で使⽤すると悩ましい問題があります。それは
「Oracle製品を仮想サーバー環境で使⽤するときは、ゲストOSに割り当てたコア数とは関係なく、サーバー
の全プロセッサがカウント対象になる」
というルールです。
近年はCPUのマルチコア化、メニーコア化が進んでいるため、とてつもないライセンス⾦額になってしまいます。Oracle Linux KVMはハード・パーティショニング・テクノロジーとして認められているため、仮想サーバー環境でも、適切なライセンス費⽤でOracle製品を利⽤できます。
詳しくは「サーバー仮想化ソフトウェア( Oracle VM 、VMware、Hyper-Vなど)を使⽤した場合のライセンスカウントはどのようになりますか︖」のPartitioningガイドをご覧ください。
まとめ
Oracle Linuxが、どのようなものか理解していただけたでしょうか。繰り返しになりますが、前半の「Oracle Linuxとは」で説明した以下の通りです。
- RHELと100%アプリケーションバイナリ互換
- Exadataなどのエンタープライズ領域における⻑年の利⽤実績
- 本番環境でも無償利⽤可能
- RHELと同等の10年間のサポート期間。さらに有償で延⻑サポートも可能
- RED HATエンタープライズ契約と⽐べて利⽤しやすい有償サポート契約
- RHEL互換カーネルに加えて、より新しいカーネルをベースとしたUnbreakable Enterprise Kernelの提供
- Kspliceによる再起動不要のパッチ適⽤
次回は実際にOracle Linuxを触りながら、どのような違いがあるのか探っていく予定です。なお、すぐ触ってみるならば無料で利⽤できるOracle Cloud Free Tier(Always Free)がおすすめです。また、以下のWebサイトで公開されているドキュメントもおすすめです。