第17回 今さら聞けないOracle VirtualBox入門 ~概要から商用利用の注意点まで~

今回は仮想サーバーソフトウェアのOracle VirtualBoxを紹介します。VirtualBoxはクライアントPC用の仮想サーバーソフトウェアとして多くのユーザーに使用されています。しかし、一部の機能やライセンスについて誤解をされている方もいらっしゃるようです。そこで今回は機能概要とライセンスについて説明します。

1. VirtualBoxの概要

2. 仮想サーバーソフトウェアの分類

3. 主な利用目的

4. ライセンスについて

5. 稼働環境

6. おわりに

1. VirtualBoxの概要

Oracle VirtualBoxはOracle社が開発・提供しているオープンソースの仮想サーバーソフトウェア(仮想化ソフトウェア)です。もともとはドイツのソフトウェア企業Innotek GmbHによって開発されましたが、その後の買収により現在はOracle社の製品となっています。

主な特徴は以下の通りです。

  • クロスプラットフォーム: Windows、macOS、Linuxなど、主要なOS上で動作します。
  • 高いコストパフォーマンス: 基本機能は無料で利用でき、開発用や学習用として非常に人気があります。
  • スナップショット機能: 仮想マシンの「ある時点の状態」を保存し、いつでもその状態に復元できます。

2. 仮想サーバーソフトウェアの分類

仮想サーバーソフトウェアには大きく分けて2種類のタイプがあります。サーバー向けのハイパーバイザー型(Type 1ハイパーバイザー)と、クライアント向けのホスト型(Type 2ハイパーバイザー)です。主な違いは以下の表01の通りです。

VirtualBoxは、PC(ホストOS)の上にアプリケーションとしてインストールし、その中で別のOS(ゲストOS)を起動できる「ホスト型(Type 2 ハイパーバイザー)」に分類されます。

表01.Type 1 ハイパーバイザーとType 2 ハイパーバイザーの違い

Type 1 ハイパーバイザーType 2 ハイパーバイザー
別名ベアメタル型ホスト型
主な用途サーバー集約・高可用性などの目的で使用する仮想サーバー基盤開発やテスト。互換性維持や配布容易性を生かした利用
特徴仮想サーバー(ゲストOS)から直接ハードウェアにアクセスできるためオーバーヘッドが少なく高性能
多く仮想サーバーを効率的に管理する機能や、高可用性機能がある
独立したOS環境を簡単に構築できる。スナップショットやクローンなどの機能を利用すると簡単にバックアップや複製ができ、効率的に開発やテストが実施できる
必要な知識多い。とくにVMwareは非常に多くの機能を持っているため専門の管理者が必要少ない。誰でも簡単に使い始められる
主なソフトウェアVMware ESXi、KVM(※1)、Xen、Microsoft Hyper-V(※2)Oracle VirtualBox、VMware Workstation Pro

※1. KVMは、Oracle LinuxやRed Hat Enterprise Linux、Ubuntuなど数多くのLinuxディストリビューションで使用できます。
※2. Hyper-Vは、Windows ServerやWindows 10(Pro または Enterprise)、Windows 11(Pro または Enterprise)などで使用できます。

3. 主な利用目的

VirtualBoxは、開発者から一般ユーザーまで幅広いシーンで活用されています。

  • ソフトウェア開発・検証環境
    • 現在使用しているPC環境を汚さずに、新しいツールやライブラリのインストールテストを行う。
    • Windows機上でLinuxサーバーの構築練習を行う。
    • 自動化ツールVagrantとの組み合わせた性格で早い環境構築
  • レガシーシステムの利用
    • Windows 11では動作しない古い業務アプリケーションを、仮想上のWindows XP等で動作させる。
  • セキュリティ学習・マルウェア解析
    • 「サンドボックス(隔離環境)」として利用し、怪しいファイルや挙動不明なソフトウェアを安全な環境で実行・解析する。
  • 複数OSの同時利用
    • Macユーザーが、Mac専用アプリと並行してWindows専用の会計ソフトを利用する、といった使い方が可能です。
  • 小規模店舗や病院などの本番環境
    • ハードウェアの非依存性やイメージの配布容易性、PC統合などの利点を生かし、小規模環境では本番環境で利用することもあります。具体例は「Human Design社Oracle VirtualBox紹介ページ」をご覧ください。

4. ライセンスについて

VirtualBoxを使用するうえで、もっとも注意が必要なのがライセンス形態です。VirtualBox本体はオープンソースですが、基本パッケージ(Base package)と拡張機能(Extension pack)でライセンスの種類が異なります。また、サポートについても併せて説明します。

4.1. 基本パッケージと拡張パック

VirtualBoxはホストOSにインストールして使用します。図01のVirtualBoxが基本パッケージに該当します。拡張パック(Extension pack)を追加でインストールするとRDPなどの機能が利用できるようになります。Guest AdditionsはゲストOSにインストールするモジュールで、ウィンドウを柔軟に使えたり、ホストOS/ゲストOS間でコピー&ペーストできたりする機能です。

図01.VirtualBoxのコンポーネント図

基本パッケージと拡張パックの違いは以下の通りです。拡張パックを企業の業務で使用するときはライセンスが有料になります。コンプライアンス違反にならないように気をつけてください。

  • 基本パッケージ(Base package)
    • ライセンスはGPLなので、誰でも無料で使用可能
    • すべての基本機能を搭載
    • 再配布可能
  • 拡張パック(Extension pack)
    • ライセンスはVirtualBox Personal Use and Evaluation License (PUEL)
    • 非商用の個人使用または教育的使用は無料だが、商用利用は有料
    • 再配布不可
    • 下記の拡張機能が使用可能
    • 仮想USBデバイス(USB2.0/3.0/3.1のサポート)
    • ゲストOSへRDP接続(VirtualBox Remote Desktop Protocolのサポート)
    • ホストWebカメラパススルーとPCIパススルー
    • Intel PXEブートROM
    • ディスクイメージの暗号化
    • Oracle Cloud Infrastructureによる統合

4.2. Oracle VirtualBox Enterprise

拡張パックのサブスクリプションがOracle VirtualBox Enterpriseです。これには拡張パックの使用権に加え、下記のサービスが含まれています。そのため拡張パックを使用しないユーザーにもメリットがあります。

  • 基本パッケージと拡張パックについて、オラクルから24時間365日のサポート提供
  • 最新のセキュリティパッチの提供
  • 拡張パックのダウンロードとインストールを社内で一元管理

必要サブスクリプション数のメトリックには、次の2種類のタイプがあります。前者はNamed User Plusに近い概念で、後者はCPUのソケット数です。

  • 指定ワークステーションのユーザー継続(Named Workstation User Perpetual)
  • ソケット(Socket)

2025年12月現在の価格は以下の通りです。

ライセンス費用最小数サポート費用(初年度)
指定ワークステーションのユーザー継続7,7501001,705
ソケット155,000134,100

参考までに、それぞれのパターンで計算すると以下の通りです。

1) 1ソケットの場合

155,000+34,100=189,100円(税抜)

2) 100ユーザーの場合

(7,750+1,705)*100=945,500円(税抜)

なお、ライセンスの詳細は弊社問い合わせ窓口までお問い合わせください。

5. 稼働環境

VirtualBoxがサポートするホストOSとゲストOSについて説明します。現在使用されているLinuxやWindows、macOSの多くをサポートしていますが、VirtualBoxのバージョンによって異なります。そのため公式マニュアルを見ることをおすすめします。

ただし、公式マニュアルにはコミュニティサイトのVirtualBoxドキュメントと、Oracle社のVirtualBoxドキュメントがあります。ほぼ同じ内容ですが、コミュニティでは最新版しか表示されません。旧バージョンを確認するときはOracle社のサイトをご覧ください。

5.1 サポート対象ホストOS

User Guideの「Installing VirtualBox」にサポート対象ホストOSがリストされています。プロセッサの種類によって異なるので注意してください。下記はRelease 7.2の情報です。

5.2 サポート対象ゲストOS

User Guideの「About Oracle VirtualBox→Guest Operating Systems」にサポート対象ゲストOSがリストされています。ホストOSとサポートOSのコンビネーションによっても対象となるゲストOSが変わるので注意してください。同じくRelease 7.2の情報です。

6. おわりに

今回はOracle VirtualBoxの概要とライセンスについて解説しました。VirtualBoxは手軽で高性能なツールですが、企業で利用する際は「商用利用における拡張パックのライセンス」に注意が必要です。知らずにコンプライアンス違反となってしまわないよう、利用用途を正しく理解して活用しましょう。弊社ではライセンスに関するご相談も承っておりますので、不安な点があればお気軽にお問い合わせください。

6.1 参考資料

VirtualBoxについて

ライセンスについて

関連サービス

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